ART55 ー町田で55人のアーティストを紹介するプロジェクトー vol.1. 「FOLLOW」

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香川 穂波、新保 花奈、仲井真 直 三人展

 

COMMUNE BASEマチノワは地元で間伐された木材を使いオーダーメイドでつくられた家具や、自然な色合いの板目が特徴的な空間だ。
ホワイトキューブではなく人の思いが込められて作られたあたたかなマチノワの空気と作家の個性が混ざるグループ展FOLLOW。
3人が追い求めるテーマを中心にして、それぞれを簡単に紹介しようと思う。(鯉沼)

香川 穂波

香川穂波作品「蝶は見る」部分

彼女は規則性と身体性に向き合ってきた。

自然現象には規則性がある。
しかしその規則性を追い求め仮説を立て作った作品は、なぜかエラーが生まれる。
彼女の原動力はそのエラーという想定外を試行錯誤する作り手としての体験の楽しさにある。

加えて、触れ動かせるという身体性も彼女にとって重要なファクター。どうなるのか想像をしながら仕掛けを触り作品が変化する。鑑賞者にも予想外の驚きを与えられれば、作り手の楽しさに近いものを感じさせることができるだろう。

マチノワではこれまでの彼女の作品も常設展示していて、以前の作品も今展での新作も触れて初めて完成するものだ。今作は木の棒を足で踏むことで仕掛けを動かせるので、躊躇せず体感してみてほしい。

新保 花奈

新保 花奈「THE FOREST]部分

彼女は『森』と向き合ってきた。
森といっても彼女の心象風景に存在する概念の『森』。
それは彼女の創造の源。暗く尊大で恐怖を感じさせ、憧れつつ畏れ敬うもの。女性的で、確かな生命を持っている。その存在は彼女の中で音を発し、動き、なにやら訴えかける。
そんな『森』が無垢材という舞台の上で、彼女独自の感性により強い色彩を纏って形作られる。

今作は網やワイヤー、糸が用いられ、以前よりも線的な主張が強い。線同士が結び、絡まり、線がくり抜いた形を意識すれば何もないところに存在が生まれる。存在の有無が入れ替わる。この入れ替えの意識を持って、彼女はこれまでのドローイングやスケッチを行ってきた。それが今展では物体性を持って立ち現れている。

仲井真 直

仲井真 直 「違う家、フシフシ。」

彼女は寂しさと向き合ってきた。

彼女にとって、何もない寂しさは心地良いもの。
得体の知れない焦燥感。そばに寄り添う存在。
遠くへと旅立ってもいつでも帰れる居場所。
そんなことを思いながら描かれる情景は、いつも見慣れた場所にも、全く知らない遠い異国のようにも見える。その景色は観る者の過去の記憶と結びついてどこか懐かしささえ感じる。
更に、その中にぽつりとある可愛くも不思議なキャラクターの存在が、寂しさのような漠然とした感覚の呼び水となっている。

マチノワの空間の中に溶け込むカレンダーや立体化したキャラクター達が、現実を飛び越え彼女の感覚世界へと引き込む。
あたたかな木の風合いとセピア調の色彩が強い親和性を持ち、密度と存在感を高めている作品だ。


この場所でしか味わえない作品が3日間という短い展示期間なのは残念に思うが、だからこその濃さと刹那的な特別感がある。

ART55 ー町田で55人のアーティストを紹介するプロジェクトーの初回に相応しい、熱意のある展示だ。

これから新たに続いていくプロジェクトと、若い3人の作家の未来が実りあるよう願っている。(鯉沼)

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